NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

お問い合わせ

商業施設など多数の人の流れを取得し分析するツールを開発

ステレオカメラを利用して人の流れをリアルタイムに取得・分析・蓄積できます。これに独自のシミュレーションを加えることで、施設全体の人流解析ができるトータルソリュションを開発しました。

研究機関・所属 産業技術総合研究所 情報技術研究部門 マルチエージェント研究グループ
氏名・職名 大西正輝 研究員
研究テーマ名 ステレオビジョンとシミュレーション技術の統合による大型複合施設での人流解析と新しいサービスモデルの創出
応用想定分野 商業施設・オフィス・イベントスペースなどを持つ大規模な複合施設や百貨店
技術概要

 商業施設・オフィス・イベントスペースなどを持つ大規模な複合施設や百貨店において、人の流れを統計的に把握することは、有用なマーケティング計画のため、また、安全、防災のためにも重要です。本技術は次の3つの特徴をもっています。

 1.ステレオ画像処理によって混雑した環境でも人を正確に抽出し追跡することができます。
 2.人流シミュレータによって群衆の移動を高速に予測することができます。
 3.2つの研究を融合した人流解析によってマーケティング調査や避難誘導を支援します。

 ステレオカメラを使って複合施設内のレストラン街で2年以上に亘って来場者を追跡する実証実験を行ない、システムの安定性を証明しています。また、イベント・宣伝の効果測定や長期間の人の流れの可視化を行っています。さらに、取得した人流データを基に、大規模な避難シミュレーションの高速計算技術を開発し、自治体と協同して効果的な避難誘導方法を検討しています。

技術の特徴
(1)
ステレオカメラを用いることによって、混雑している環境においても高い精度で人を追跡することができ、どこからどの方向に人が流れているかなどのデータが自動的に記録・蓄積できます。
(2)
人流の数を時間軸に対して正規混合表現することによってイベント・看板の宣伝効果や、天気・曜日と人の流れの関係などを統計的に分析することができます。
(3)
ネットワーク型の高速な人流シミュレータの開発によって、数分以下で大人数の人流が予測できます。従って様々な条件下での人流を比較することができ、高層ビルの最適な避難誘導方法などが容易に分かります。
従来技術との比較

 画像処理による人の追跡やシミュレーションによる人流の予測に関しては、これまでにも電機メーカなどが開発を行っていますが、実利用という観点では普及していません。マーケティング支援や避難誘導支援のツールとしての有効性は多くの大規模商業施設等での実データの蓄積がないと理解されません。データの蓄積がないために実物件への設置が進まず、そのためにデータ蓄積ができないというジレンマがあります。本研究では画像処理による人の追跡、シミュレーションによる人流の予測、2つの技術の統合による人流の分析の3つを統合的に運用することで複合施設や公共施設などの実環境でのデータ蓄積を継続しています。

 従来技術に比べて優位な点としては、本研究ではステレオ画像処理にファジィクラスタリングを用いることで、混雑する環境下においても正確に人を抽出できる点、また、従来の人流シミュレータは1試行あたり数十分から数時間のオーダーの時間が必要でしたが、ネットワーク型の高速なシミュレータを開発することで大人数の人流が数分以下で予測可能な点が挙げられます。

特許出願状況
なし(現在準備中)
研究者からのメッセージ

 バーコードの開発によって物流にイノベーションがおきました。物の次は人。人流によるイノベーションをおこしたい企業からの相談をお待ちしています。

参考:

人流解析を利用した新しい街づくりの提案
http://flow.upat.jp/
大西研究室
http://onishi-lab.jp/aist/index.html
研究論文
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007593182

お問い合わせはこちらから