NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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多項目バイオマーカーの同時・高速測定用の安価なデバイス開発

酵素・蛍光標識抗体を必要とせず、各種バイオマーカー等のタンパク質を同時に高速で検出・定量することを可能とする安価なデバイスを開発する。医療現場へオンサイトで診断結果を提供できる診断装置などへの活用が期待される。

研究機関・所属 広島大学 ナノデバイス・バイオ融合科学研究所
氏名・職名 池田丈 特任助教
研究テーマ名 シリコン結合タンパク質をバイオインターフェイスとした高集積化シリコンリング光共振器による多項目同時測定バイオセンサーの開発
応用想定分野 バイオ研究および医療現場での迅速バイオ分子測定
技術概要

 医療現場における診断やバイオ研究遂行のために、迅速かつ安価なバイオマーカーの測定技術は今後ますます需要が増大すると考えられています。従来技術であるELISA法を利用したバイオマーカーの測定では酵素標識または蛍光標識した抗体が必要となり、また結果が得られるまでに時間がかかるなどの問題点があります。このような問題点を解決する目的で開発が進められている他の手段においても、検出に利用するタンパク質の固定化に煩雑な工程が必要となるなどの課題が解決できていない状況です。

 我々広島大学・ナノデバイス・バイオ融合科学研究所はこのような従来技術の問題を解決するために独自のバイオ技術によるタンパク質固定化法と光による高感度検出を組み合わせ、かつこれまで蓄積してきたシリコンデバイス微細加工・集積化技術を活用することにより安価な多項目同時測定バイオセンサーを開発するに至りました。
 本技術によるデバイスを活用した測定装置により、従来技術であるELISA法に匹敵する感度でのバイオマーカーの多項目同時測定が極めて短時間で可能となり、医療現場へオンサイトで測定結果を提供することが可能となると期待されます。

【図の説明】~開発中の技術の紹介~
・抗体・酵素などのタンパク質を、シリコン基板上のリング状導波路の上にシリコン結合タンパク質「Si-tag」を用いて固定化させる。
・標的分子を含むサンプル溶液を基板上に送液し、導波路上の固定化タンパク質と接触させる。
・出力される光のピーク波長をサンプル送液前と比較することで、固定化タンパク質と標的分子の特異的結合を定量測定できる。

技術の特徴
(1)多項目測定
シリコン基板上にアレイ化した各デバイス上に検出用の異なるタンパク質を配置することにより、例えば数十μlのサンプルから最大100項目のタンパクを同時測定する事が可能となる。
(2)迅速
前処理なしにサンプル溶液を基板上に送液するだけで瞬時に標的分子の検出及び定量測定が可能となる。
(3)安価
デバイスの製作は半導体製造の技術が応用できるため安価な量産が可能で、またタンパク質の酵素・蛍光標識なども必要ないためにランニングコストも安価に押さえる事が出来る。
(4)高感度
現状はng/mlレベルであり、pg/mlに向け技術開発中。
(5)小型
現状は1cm×1cmサイズの基板で20項目測定可能で、さらに同寸で100項目測定に向け技術開発中。

  • 写真は20項目測定用の試作品
従来技術との比較
特許出願状況
・PCT/JP2006/322388 酸化ケイ素含有物質に結合するタンパク質を介したタンパク質の固定化方法及び固定化剤
・特願2008-198819、米国出願12/500526 タンパク質の精製方法
研究者からのメッセージ

 シリコン結合タンパク質「Si-tag」を利用することで簡単な半導体バイオ融合デバイス作製が可能となります。バイオテクノロジーと半導体デバイスの利点を融合させることで迅速なバイオ分子測定を実現します。

参考:

広島大学広報
http://www.hiroshima-u.ac.jp/top/koho/news_info/p_7yhzut.html
黒田研究室
http://home.hiroshima-u.ac.jp/akbio/research10.pdf
多項目同時測定バイオセンサの開発
http://venturewatch.jp/nedo/download_pdf/20100309_hiroshima.pdf
Siリング光共振器
http://www.seis.hiroshima-u.ac.jp/index.php?id=67
Si-tagの説明とタンパク質精製法
http://jstshingi.jp/abst/p/09/903/hiroshima147.pdf
The Si-tag for immobilizing proteins on a silica surface
Biotechnol. Bioeng. 96, 1023-1029
「シリカ結合タンパク質「Si-tag」を利用した半導体バイオ融合デバイスの開発」
BIO INDUSTRY 2010年11月号 (vol. 27, no. 21) :

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