NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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高温発酵により低コストでバイオエタノール生産を可能とする耐熱酵母の開発

エタノール発酵酵母の耐熱性を向上させることにより、バイオエタノールの生産プロセスコストを大幅にダウンさせる酵母開発を推進中。さらに、本研究で開発された高温発酵酵母の改変技術は、エタノール以外の最終生成物の発酵生産にも活用できる技術です。

研究機関・所属 山口大学 医学系研究科応用分子生命科学系専攻
氏名・職名 星田尚司 准教授
研究テーマ名 低コストエタノール生産プロセスに使用する耐熱性酵母株の研究開発
応用想定分野 バイオエタノールの低コスト生産、各種発酵生産の高温プロセス化
技術概要

 世界のエネルギー需要は増え続けています。化石燃料は資源に限りがあり、再生可能なエネルギーへの転換が急がれています。エタノールは再生可能エネルギーの有力候補の一つとして挙げられていますが、今後のバイオマスエタノールの普及に向けては、化石燃料に比べて生産コストが高いことが大きな課題となっています。

 そこで我々は、エタノール生産プロセスの低コスト化に寄与できる耐熱性酵母(Kluyveromyces marxianus )の開発研究を行っています。この酵母は、既存の商用エタノール生産酵母株では不可能な温度である45℃でも高いエタノール発酵能力を持っています。高温エタノール発酵が可能になれば糖化酵素活性増大、冷却エネルギー削減などの効果でトータルコストと生産効率を大きく低減することが可能となります。現在、さらに高温で高生産効率の酵母の開発を進めています。
 またこの研究開発を進める過程で蓄積された耐熱性酵母株の形質転換技術を活用することにより、エタノールのみならず他の発酵生産プロセスも高温化によるコスト低減を追求できるものと考えています。

技術の特徴
(1)
耐熱性酵母Kluyveromyces marxianus は49℃で増殖し、45℃でエタノール産生する。
(2)
45℃の発酵プロセスは32~35℃に比べ大幅な上コスト削減が可能となる。
(3)
既存のSaccharomyces cerevisiaeに比べ遺伝子発現能力が5~20倍高い。
(4)
凝集性の耐熱性酵母も遺伝子工学的に開発しており、有利なプロセス設計が可能となる。
従来技術との比較
特許出願状況
WO2009/116286  凝集性酵母、およびその作成法
特願2010-058917 クルイベイロマイセス・マルシアヌス形質転換体の製造方法
特願2010-026679 サッカロマイセス・セレビシエ由来の特定のプロモーターをクルイベロマイセス・マルシアヌスにおいて用いる目的遺伝子の発現方法
特願2010-026682 クルベロマイセス・マルシアヌス由来の高発現プロモーター
研究者からのメッセージ

 耐熱性酵母K. marxianusは高温での増殖能力に限らずその多様な資化性の点でもバイオマスを利用した物質生産に大変有望な株です。この酵母の、遺伝子導入、遺伝子破壊、遺伝子発現系を構築できたことでエタノールに限らず多くの物質生産を担えると期待しています。また、タンパク質分泌生産能力が高いことも大きな魅力です。この酵母を使った有用物質生産の実用化を共同で目指していただけるパートナーとなってください。

参考:

「耐熱性酵母の高温エタノール発酵と遺伝子工学」:
バイオサイエンスとインダストリー、67、418-422(2009)
耐熱性酵母の高効率遺伝子導入技術と凝集性株の育種:
http://jstshingi.jp/abst/p/09/916/yamaguchi1.pdf
耐熱性酵母のゲノム解析に関するniteとの共同研究:
http://www.bio.nite.go.jp/ngac/km1.html

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