NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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骨粗鬆症用の人工骨・関節デバイスに利用できる植物由来の骨再生物質

植物由来の物質ハルミンまたはアセロゲニン類縁体は高い骨再生能を有します。
これらは食経験があり人体に対して比較的安全性に富む骨再生化学物質です。
骨粗鬆症患者に適用できる画期的な整形外科医療デバイスです。

研究機関・所属 産業技術総合研究所・中部センター 先進製造プロセス研究部門 生体機構プロセス研究グループ
氏名・職名 稲垣雅彦 研究員
研究テーマ名 ハルミン類縁体またはアセロゲニン類縁体を担持した高齢者対応整形外科医療デバイスの研究
応用想定分野 人工骨・人工関節。骨粗鬆症治療、生体内における医療デバイスとの併用
技術概要

 日本の高齢化率は急速に進んでおり、それに伴い骨粗鬆症の患者数も増加傾向にあります。2050年、全世界における骨粗鬆症に起因する大股骨の頸部骨折は626万件/年に達すると予想されています(H19年度 NEDO国際共同研究先導調査事業による)。
 本研究はその骨粗鬆症の再生医療の一つとして、人工骨、人工関節などの医療デバイスの実現を目指しています。

 動物の骨細胞は骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞の三種ですが、骨代謝に深く係わっているのは骨芽細胞および破骨細胞です。この両者のバランスの上に健全な骨が維持されています。高齢化とともにこのバランスが崩れ、骨芽細胞よりも破骨細胞が優位を占め、過剰な骨吸収により骨量(骨密度)が減少し骨疾患が生じます。骨粗鬆症はその最も重い疾患ですが、この疾患に対応した生体骨と材料との安定なインターフェースを形成する整形外科用医療デバイスは確立していません。
 本研究は、骨再生に有効な成分であるハルミン(例えば「時計草」由来‐図1)類縁体およびアセロゲニン(例えば、「目薬の木」由来‐図2)類縁体を利用することで骨粗鬆症の患者にも適用できる整形外科医療デバイスの開発を進めています。従来製品で課題であった骨粗鬆症患者への骨固定を実現する技術です。

  • 図1 ハルミン(Harmine)
  • 図2 アセロゲニン(Acerogenin B)

 ハルミンおよびその類縁体やアセロゲニンおよびその類縁体は骨芽細胞の分化促進活性がすぐれています(共同研究先・中部大学・応用生物学部・禹教授による)。これらは細胞レベル、実験動物レベルで確認しています。また、これらは食経験のある比較的安全な化合物です。
 ハルミン等骨再生に有効な成分を人工骨、関節等のデバイス周囲に導入し、有効成分を骨再生能のために効率的に引き出すシステムが必要です。すなわち、医療デバイスの表面/内部構造に有効成分を安定に包含し、徐放量を制御可能にする生分解性カプセル、マイクロスフェア等も開発中です。
 ハルミン、アセロゲニンとも化学合成が可能であり、他の方法(例えばBMP−表1参照)で使用される蛋白質に比べ低分子であり製造コストも安価であり、工業的に量産可能で利用しやすいという利点もあります。
 現在、整形外科用医療デバイスに研究を集中しています。

技術の特徴
(1)優れた骨再生能
ハルミン類縁体、アセロゲニン類縁体ともに骨芽細胞の分化促進活性が高いことが第一の特徴です。
(2)高い安全性
ハルミン、アセロゲニンともに食経験がある化学物質であり、比較的安全です。骨材料にアパタイトが使用されるが安全性は確認されています。また、ハルミン等をカプセル化する場合、生分解性ポリマーを使用する時にはその安全性も確認します。
(3)骨粗鬆症医療デバイス
ハルミン等をマイクロカプセル化してデバイスに組み込んだ時、安定性が高いのと同時に徐放性の制御が可能です。
従来技術との比較
特許出願状況
特許公開 2008-272385 生体インプラント材及びその作製方法と用途
特許公開 2008-104866 生体材料及びその作製方法とその用途

関連特許

特許番号:3686935 リン酸カルシウムで被覆された球状生体内分解性高分子の製造方法(発明者:永田夫久江らは研究協力者)
研究者からのメッセージ

 本研究の目的である骨粗鬆症で苦しんでおられる方のために、医療デバイスを提供したい。そのために、セラミック関連、医療材料・システム関連の企業との共同研究を願っています。また、それに対する諸問題解決のために現場で実際に使っておられる整形外科医の共同研究への参画を強く願うものです。

参考:

1.産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門 生体機構プロセス研究グループ
http://unit.aist.go.jp/amri/group/biproc/ja/intro.html
2.Woo Je-Tae(中部大学):天然物由来骨代謝を調節する化合物−ハルミン類縁体による骨形成促進
3.H.Inoda, G.Yamamoto,et.al. : rh-BPM2-induced ectopic bone for grafting criticalsize defects: Preliminary histological evaluation in rat calvariae
Oral & Maxillofocial Surgery Vol.36(1), 39-44 (2007)
4.http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902281192384568
rhBMP2併用同種骨髄間葉系細胞による骨再生に対するFK508投与効果に関する研究

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