有望技術紹介

59 皮膚に貼るナノシートウエアラブルデバイス

早稲田大学リサーチイノベーションセンター
高分子ナノシートの柔軟性と密着性を活用して、直接皮膚に貼り付け、体温・血圧などの生体情報を収集するウェアラブルデバイスを開発した。

【本技術の概要】

早稲田大学リサーチイノベーションセンターの研究グループは、高分子ナノシートの柔軟性と密着性を利用し、熱処理を用いない手法で電子素子を固定・通電させる封止技術を開発した。これにより、デバイスを皮膚に貼付け、柔軟な生体組織表面でも安定的に通電させることに成功した。また、糊などによる装着時の不快感を伴わないことから、生体計測用ウェアラブルデバイスなどへの応用が期待される。
高分子ナノシートは、数十~数百ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)と極めて薄く、高い柔軟性と密着性を持つ。今回の研究では、この高分子ナノシート表面に導電性銀インクを印刷し、ナノシートの柔軟性と密着性を利用した配線・素子の封止を行い、LEDを搭載したデバイスを作製、皮膚上での動作を検証した。

高分子ナノシートの素材には、ゴム (SBS:ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン共重合体)を用いることで、従来よりも100倍柔らかいナノシートを開発した。SBSナノシートは、連続式印刷技術(ロールtoロール)により、ロール状のPETフィルム上に積層し、SBSナノシートとPETフィルムの間に薄い水溶性のポリビニルアルコール(PVA)の層を形成しておくことで、紙テープの枠を利用してPETフィルムから簡単に剥がすことができる。このSBSナノシート表面にインク吸収層をコートした後、インクジェットプリンタを用いて銀インクを印刷。印刷した配線上にLEDを載せ、別のSBSナノシートで挟み込むことでLEDを封止した。最終的に、PVA層を水で溶かし、「SBSナノシート-インク吸収層-印刷配線-LED-SBSナノシート」の5層構造をPETフィルムから剥離し、皮膚に貼付けた。

得られた電子デバイスをSBSナノシートで重ね合わせて挟んだところ、ハンダ付けなどの高温処理工程を用いることなく、ナノシートの柔軟性と密着性を利用して配線と電子素子を接続することができた。この時、ナノシート上の印刷配線と電子素子の電極部は密に接触していることを導通テストで確認した。また、ナノシートの膜厚を薄くするほど電子素子の密閉性は向上し、より小さい接触抵抗値で接続できた。このことから、印刷配線と素子の電気的接続はナノシート特有の柔軟性と密着性に由来することがわかった。SBSナノシートとLEDからなるデバイス(シート部総膜厚:約800 nm)を皮膚に貼付したところ、柔軟な生体組織表面でもLEDを安定に点灯させることに成功した。

【本技術の特徴】

①肌などの対象物への直接貼付けが可能である。
②対象物に高い追随性・密着性をもつ導電配線を実現した。
③電子素子と導電配線の物理的密着による室温実装が可能である。

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