NEDO 若手研究グラント平成23年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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ナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC)の大量合成とその構造的特徴を活かした
新規デバイスの開発

本研究では、遺伝子工学・バイオプロセス工学の応用による効率的なナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC)の合成と、電解質・エレクトロクロミック(EC)との複合化による紙(セルロース)をベースとした新しい表示デバイス(Bacterial Cellulose Network-Electro Chromic(BCNEC))の開発を目標としています。

研究機関・所属 北海道大学 大学院工学研究院 生物機能高分子部門 応用生物化学研究室
氏名・職名 田島 健次 准教授
研究テーマ名 遺伝子工学およびバイオプロセス工学の応用による微細化バクテリアセルロースの大量生産と微細ネットワーク構造を利用した新規表示デバイスの開発
応用想定分野 各種デバイス(電子ペーパーなど)、医療・化粧品、材料、食品
技術紹介

 バクテリアセルロース(BC)の応用例として、食品(ナタデココ)、火傷治療に用いられる創傷被覆材、人工血管、スピーカー用コーン紙、透明フレキシブルフィルム、等があげられますが、その生産性の低さが産業応用の障害となっていました。本技術はバイオリファイナリーによる未利用バイオマスからのナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC)の効率的合成に関するものであり、BCの生産性向上と低コスト化を可能にします。

 また、NFBCを含むシートに電解質・エレクトロクロミック(EC)溶液を含浸させることにより、セルロースをベースとした表示デバイス(BCNEC)を作製することができます。BCNECは、電気的に文字や絵を書いたり消したりして表示できる機能を持ち、視認性に優れ、軽くてハンドリングがよい、などの特徴を有する表示デバイスで、将来的に"電子ペーパー"に応用したいと考えています。

従来技術との比較

以下の表にナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC)と植物系セルロースナノファイバーとの比較を示します。

さらに、BCNECと他の表示デバイスとの比較を示します。

特許出願状況

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研究者からのメッセージ

 再生可能なバイオマスからバイオリファイナリー技術によって合成されるBCは、環境循環型の高分子材料であり、分解による炭酸ガス濃度の上昇を伴わない、カーボンニュートラルな素材です。また、バイオマスを原料とし、バイオプロセスによって低エネルギー消費、低コストで高付加価値製品を製造する基礎技術の開発は、国家戦略にも合致しており、産業競争力強化や社会の持続的な発展に大きく寄与出来ると考えられます。BCは、そのユニークな構造と特徴から食品・医療・化成品など多岐にわたる用途への応用が期待されていますが、製造コストが高く、このことが産業化への障壁になってきました。本プロジェクトでは、再生可能な様々なバイオマスからバイオリファイナリー技術によってナノフィブリル化BC(NFBC)を大量に合成する技術を開発する計画であり、生産性の向上ばかりでなく、ハンドリング性・成型性の向上などによってBCそのものの用途を拡大したいと考えています。

発表論文:

1.
田島健次、日本画像学会誌、49(4)、276-281(2010).
2.
S. Kawano, K. Tajima, Y. Uemori, H. Yamashita, T. Erata, M. Munekata, and M. Takai,、 DNA Res., 9, 149-156 (2002)
3.
Y. Yasutake, S. Kawano, K. Tajima, M. Yao, Y. Satoh, M. Munekata, I. Tanaka, Proteins, 64, 1069-1077 (2006).
4.
Kawano S, Tajima K*, Kono H, Numata Y, Yamashita H, Satoh Y, Munekata M., J. Biosci. Bioeng. 106(1), 88-94 (2008).
5.
佐藤康治、田島健次、松島得雄、大嶋武、棟方正信、環境技術、38(11)、774-778 (2009).
6.
S.-Q. Hu, Y.-G. Gao, K. Tajima, N. Sunagawa, Y. Zhou, S. Kawano, T. Fujiwara, T. Yoda, D. Shimura, Y. Satoh, M. Munekata, I. Tanaka and M. Yao, PNAS, 107, 17957‐17961 (2010).