NEDO 若手研究グラント平成23年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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製造プロセスの高度化に向けた多様環境対応型 静電気計測技術の開発

近年、製造業においてプロセス中に発生する静電気問題が深刻化しています。この本質的問題を解決するために、オンサイト計測に基づくプロセスへのフィードバックが可能な新しい静電気検出方法・技術を開発しました。本技術を用いて、さまざまな制約が存在する生産現場でも柔軟に対応できる非接触型静電気計測技術の開発を目指します。

研究機関・所属 産業技術総合研究所 九州センター 生産計測技術研究センター 光計測ソリューションチーム
氏名・職名 菊永 和也 研究員
研究テーマ名 製造プロセスの高度化に向けた多様環境対応型 静電気計測技術の開発
応用想定分野 半導体製造、プリンテッドエレクトロニクス、フィルム製造
技術紹介

 今回開発した技術では、帯電体を音波などによって振動させ、電磁界を発生させます。そしてアンテナで電界の変化を測定して静電気を計測します。
 通常、電磁界は、導体を流れる電流の変化によって電界と磁界が時間的・空間的に変化し、お互いに誘起しあうことで発生します。本技術では、帯電体を振動させることで、静止している電荷〔静電気〕の位置を空間的に変化させることで、交流電流と同様の効果を作り出して電磁界を誘起させます。

図1 技術の概念図

技術の特徴

静電気を帯びた物体〔帯電体〕を振動させると、電磁界が誘起されます。その誘起された電磁界の変化を測定すれば物体の静電気量が計測できます。この技術は、

(1)
誘起された電磁界が測定対象物を中心に全方向で検出可能です。
(2)
音波を用いて、離れた位置からでも位置精度の高い静電気モニタリングができます。
(3)
装置構成が簡易でさまざまな環境に柔軟に対応できます。

以上のようなことから、本技術は空間的制約の多い生産現場での応用が期待されます。さらに、収束させた音波を用いて物体表面を走査することで平面の静電気分布を可視化できます。収束音波の走査を高速で行うことで、短時間で静電気分布を測定できる技術として期待されます。

従来技術との比較

これまで静電気計測器として生産現場で広く使用されてきた表面電位計は、センサーを測定対象物に近づける必要があったため測定できる空間に制約があり、また近傍の帯電物やアースなどの測定理境の影響を受けやすいといった問題がありました。さらに静電気分布を計測するためには、1点ずつセンサーを動かして測定しなければならないため、二次元平面の静電気分布計測の高速化が困難でした。

表1 本方式と従来製品との比較

特許出願状況

特願2011-025542 「静電気帯電計測方法及び装置」
特願2011-136195 「静電気量計測装置」

研究者からのメッセージ

本研究が達成できれば、これまで計測不可能な環境・プロセス中で静電気計測が可能になり、発生箇所の特定や除電効果の確認等が容易にできるようになります。また、この技術により、静電気障害が深刻となっている電子系、化学系など、広範囲の分野において大きな波及効果が期待できます。

参考:

産業技術総合研究所 九州センター 生産計測技術研究センター 光計測ソリューションチーム
http://unit.aist.go.jp/msrc/ci/organization/hikari.htm