NEDO 若手研究グラント平成23年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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塗布型メタルベース有機トランジスタの開発と無線回路応用

「メタルベース有機トランジスタ(MBOT)」は、新しい動作原理に基づく縦型構造の有機トランジスタで、シリコンのバイポーラトランジスタとよく似た電流増幅特性を示します。低電圧(5V)で1A/cm²もの大電流駆動が可能で、1MHz以上の動作周波数も予測されています。更に有機材料を使うことから樹脂基板上に構成することが可能でフレキシブル回路も実現することができるなど、広い範囲での応用が考えられます。

研究機関・所属 山形大学 大学院理工学研究科 有機デバイス工学専攻
氏名・職名 中山 健一 准教授
研究テーマ名 塗布型メタルベース有機トランジスタの開発と無線回路応用
応用想定分野 RFタグのような無線通信回路、フレキシブル基板上の電子回路、有機ELパネル駆動回路
技術紹介

 現在はSiやGaAs等の無機材料を使った電界効果トランジスタ(FET)が主流になっています。一方、同様の構造を持った有機材料による有機FETの研究開発も進められていますが、有機FETは大電流動作が難しくその応用範囲は論理回路などの微少電流用途に限定されています。
 これに対して新しい原理に基づいた本研究の縦型有機トランジスタ「メタルベース有機トランジスタ(MBOT)」は、シリコンのバイポーラトランジスタとよく似た電流増幅特性を示します。このトランジスタ構造では短チャンネル化ができることから周波数特性も向上し、低電圧(5V)で1A/cm²もの大電流動作が可能です。
 この「メタルベース有機トランジスタ(MBOT)」は、有機材料を使うことから樹脂基板上に構成することが可能でフレキシブル回路を実現することができます。
 これら種々の特性から、有機FETが苦手とする無線通信回路での利用も可能となり、大電流を必要とする有機EL表示パネルの駆動回路にも対応できると考えられます。
 当初、この縦型有機トランジスタは蒸着法で作製されておりましたが、塗布プロセスによる作製にも成功し、将来的にはインクジェット法等での作製も考えられています。

技術の特徴
(1)
有機材料を使った簡単な積層構造でフレキシブル回路の実現が可能。
(2)
低電圧(5V)で1A/cm²もの大電流の駆動が可能。
(3)
予測される動作周波数は1MHz以上。
従来技術との比較

MBOT(Metal-Base Organic Transistor):メタルベース有機トランジスタ、BT(Bipolar Transistor):バイポーラトンジスタ、FET(Field Effect Transistor):電界効果トランジスタ、TFT(Thin Film Transistor)

特許出願状況
1)
特開2010-263144(公開日2010年11月18日)、「トランジスタ素子」、中山健一、城戸淳二、夫勇進、八嶋友康、小熊尚実、平田直毅、河野寿夫。
2)
特開2009-272442(公開日2009年11月19日)、「有機トランジスタ素子と電子・電気機器」、中山健一、城戸淳二、夫勇進、鈴木文人。
3)
特開2007-258308(公開日2007年10月4日)、「トランジスタ素子及びその製造方法並びに発光素子及びディスプレイ」、横山正明、中山健一。
研究者からのメッセージ

塗布・印刷技術で作製できる有機トランジスタの中でも、通常の有機FETでは実現不可能な、大電流・低電圧動作を実現する新しい縦型有機トランジスタの技術を提供致します。この有望なデバイスを実用化するために、デバイスメーカー、材料メーカーとの連携を希望しています。

参考:

山形大学大学院理工学研究科 中山研究室「メタルベース有機トランジスタ(MBOT)の開発」
http://nk.yz.yamagata-u.ac.jp/nk/research.html

発表論文:

1.
"High-current and low-voltage operation of metal-base organic transistors with LiF/Al emitter", K. Nakayama, S. Fujimoto, and M. Yokoyama, Appl. Phys. Lett., 88, 153512 (2006).
2.
"High Current Amplification in p-Type Metal-Base Organic Transistors Using Pentacene Films", K.Nakayama, R.Akiba, and J.Kido, Applied Physics Express, 5, 094202 (2012).