NEDO 若手研究グラント平成23年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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粉体プロセスを駆使した新規ゼオライトナノ粒子製造プロセスの開発と
有害カチオン回収を目的とした高速イオン交換材への応用

A型ゼオライトをビーズミル粉砕処理によりナノサイズ化させた後、非晶質化した部分を水熱合成処理により再結晶化させることにより、高結晶性ナノゼオライトを調製できることに成功しました。この手法を他のゼオライトへ拡張すると同時に、大量生産に向けた技術を確立させることにより、水中のカドミウム、クロム、セシウム等の重金属有害カチオンを除去する高速イオン交換材としての応用を考えています。

研究機関・所属 横浜国立大学大学院 環境情報研究院
氏名・職名 脇原 徹 助教
研究テーマ名 粉体プロセスを駆使した新規ゼオライトナノ粒子製造プロセスの開発と有害カチオン回収を目的とした高速イオン交換材への応用
応用想定分野 イオン交換材、ゼオライトの高機能化
技術紹介

 一般的なナノゼオライト合成法である水熱法は、希薄アルミノシリケート溶液中で結晶化させるため生産性が低く、また結晶化制御のために有機構造規定剤を使用する必要がある、といった問題があります。そこで、ミクロンサイズのゼオライトを粉砕により微細化し、高機能化させるアプローチを考えました。具体的にはゼオライトをビーズミルにより粉砕し、また粉砕によって生じた非晶質層を再結晶化させることで結晶性の高いナノゼオライトを作製することに成功しました。本プロジェクトではこのシーズ技術を深化させ、ナノゼオライトを用いたイオン交換材の開発を行います。

技術の特徴

 図のようにゼオライトをビーズミル粉砕させると、粉砕衝撃により一部非晶質化してしまいます。非晶質化した部分はゼオライト本来の特性であるイオン交換特性や触媒特性を発揮することができません。そこで、再結晶化処理を行うことで、粒成長させることなく結晶化度を高め、高結晶化度ナノゼオライトを作製することに成功しました。トップダウン的手法でナノゼオライトを作製した例はほとんどなく、粉砕法と再結晶化法を組み合わせてナノゼオライトを調製するという手法は私が開発したオリジナルのシーズ技術です。

従来技術との比較

 既往のゼオライトナノ粒子合成に関する研究はすべてボトムアップ法、すなわち4級アンモニウム塩や特殊な有機物を用い、核発生・結晶成長を制御することにより達成されています。例えば、典型的なイオン交換材であるA型ゼオライトナノ粒子を合成する際には、有機構造規定剤であるテトラメチルアンモニウム塩を添加する必要があります。しかし、有機物は高価であり最終コストに大きく影響するため、ゼオライト合成時に有機物を使用しない新規ナノゼオライト製造プロセスの確立が望まれているのが現状です。一方本技術は、ナノゼオライト調製の際に有機構造規定剤を使用する必要が無いため、ゼオライトをより低コストで作製することができます。とはいえ、粉砕装置を導入する必要があるため、より大規模にゼオライトを生産するプロセスに適していると思われます。

特許出願状況

特許出願2010-118304
特許出願2011-188254

研究者からのメッセージ

 イオン交換材をはじめ、ゼオライトの用途は様々です。ナノサイズのゼオライトを用いることにより、これらの用途に対し、より高機能化させることができるのではないかと考えております。ご興味のある方とは是非共同研究などで、ご一緒できればと思います。

発表論文:

1.
Toru Wakihara, Kaku Sato, Gopinathan Sankar, Junichi Tatami, Katsutoshi Komeya, Takeshi Meguro, Kenneth J. D. MacKenzie, "Changes in the medium-range order of zeolite A by mechanical and thermal Amorphization", Microporous and Mesoporous Materials, 136, 92-96 (2010).
内容:粉砕非晶質化させたゼオライトの構造解析
2.
Toru Wakihara, Koki Sato, Satoshi Inagaki, Junichi Tatami, Katsutoshi Komeya, Takeshi Meguro, Yoshihiro Kubota, "Fabrication of Fine Zeolite with Improved Catalytic Properties by Bead Milling and Alkali Treatment" ACS Applied Materials & Interfaces, Oct, 2, 2715-2718 (2010).
内容:ビーズミル粉砕による微細ゼオライトの作製、及びその触媒特性
3.
Toru Wakihara, Ryuma Ichikawa, Junichi Tatami, Akira Endo, Kaname Yoshida, Yukichi Sasaki, Katsutoshi Komeya, Takeshi Meguro, "Bead-Milling and Postmilling Recrystallization: An Organic Template-free Methodology for the Production of Nano-zeolites" Crystal Growth & Design, Apr, 11, 955-958 (2011).
内容:ビーズミル粉砕と再結晶化処理を組み合わせた、ナノゼオライトの作製
4.
Kaku Sato, Toru Wakihara, Shinji Kohara, Junichi Tatami, Satoshi Inagaki, Yoshihiro Kubota, Katsutoshi Komeya, Takeshi Meguro, "Effect of the atomic arrangement of amorphized zeolite on the recrystallization behavior to crystalline zeolite" Journal of the Ceramic Society of Japan, Jul, 119, 605-608 (2011).
内容:非晶質化させたゼオライトの構造解析
5.
Toru Wakihara, Akio Ihara, Satoshi Inagaki, Junichi Tatami, Kaku Sato, Katsutoshi Komeya, Takeshi Meguro, Yoshihiro Kubota, Atsushi Nakahira, "Top-down tuning of nanosized ZSM-5 zeolite catalyst by bead milling and recrystallization" Crystal Growth & Design, Sep, 11, 5153-5158 (2011).
内容:ビーズミル粉砕と再結晶化処理を組み合わせたナノゼオライトの作製、及びその触媒特性評価

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