NEDO 若手研究グラント平成23年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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酵素反応を電気的に駆動させて有用物質生産の効率を高める技術

本研究では酸化還元酵素反応を利用するバイオプロセスの高効率化・低コスト化を実現するために、酵素反応を電気的に駆動するための手法の開発を行っています。具体的にはシトクロムP450をターゲットにし、酵素の電極界面上への固定化及び電圧印加による活性化を可能にする技術を開発しています。更に同技術をマイクロ化学技術と組み合わせ、生産効率の極めて高い電気化学酵素リアクターを開発する予定です。

研究機関・所属 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門
氏名・職名 三重 安弘 主任研究員
研究テーマ名 電気的酵素反応駆動による高効率な物質生産技術の開発
応用想定分野 バイオプロセス(医薬品生産の効率化等)、バイオセンサ(薬物代謝評価の効率化等)
技術紹介

 シトクロムP450酵素は、化学合成困難な医薬品等の有用物質生産の重要なツールとして注目され、微生物中のP450酵素反応を利用する微生物変換プロセスが一部実用化されています。しかしながら、1)酵素活性が低い(←酵素への電子供給が遅い)こと及び2)物質変換効率が低いことによるコストが問題となっています。本技術は、電気化学法の利点を活用して、これら従来技術の課題を克服する「P450バイオプロセスの高効率化技術」になります。

 本技術では、P450酵素を独自の機能電極界面上に固定し電圧を印加して同酵素反応を駆動します。この方法では、電子移動反応の駆動力を容易に増大でき、また最適な電子移動経路の構築も可能となることから、酵素への迅速な電子供給が可能となり、活性が大きく向上します。更に、開発するP450電極技術をマイクロ流路技術と組み合わせることで、大きな比表面積(反応溶液体積に対する電極面積の割合)効果を利用して、物質変換効率を飛躍的に向上できると考えています。

技術の特徴
(1)
通常は電極から酵素へ電子を供給することは困難ですが、簡易ナノ構造を有する電極界面を用いることで、P450酵素への迅速な電子の供給が可能になったことが大きな特徴です(発表論文1, 2, 特許1)。
(2)
しかしながら、ナノ構造界面のみでは、酵素の安定性に問題があり(電圧印加の繰り返しにより酵素が失活する)、これを解決するための"機能性ナノ構造界面"の開発を現在行っています(特許出願予定)。
(3)
本技術は、上記有用物質生産のみならず、新薬開発や薬物投与設計に重要な「ヒト薬物代謝P450酵素による薬剤の代謝アッセイ」の低コスト化・迅速化にも有用な技術です。また、他の酸化還元酵素、例えばグルコース酸化酵素を利用する血糖値センサの簡便化・低コスト化等への応用展開も可能になる特徴を有しています。
従来技術との比較

1.P450酵素反応を利用した有用物質生産の場合

2.ヒト薬物代謝P450酵素による薬物の代謝評価の場合

特許出願状況

1)特開2011-69727(特願2009-221129)、出願日2009年9月25日
2)出願予定(機能性ナノ構造界面)

研究者からのメッセージ

 本研究では機能性ナノ界面を用いることで、これまで不可能であったP450酵素の安定な電気的駆動を可能にします。これにより、医薬品等の有用物質生産に用いられているP450バイオプロセスにおいて、従来の半分以下の時間で同等以上の生産を実現できると予想され、大幅なコストダウン(効率化)が期待されます。また、本技術は電極-酵素間の電子授受のための基盤技術となることから、酸化還元酵素を利用するセンサや電池分野への応用展開も期待されます。ご興味をお持ち頂けましたら、お気軽にご連絡頂けますと幸いです。

発表論文:

1.
Y. Mie, M. Suzuki, Y. Komatsu, Electrochemically-driven drug metabolism reaction by membrane containing human cytochrome P450, J. Am. Chem. Soc., vol.131, pp.6646-6647 (2009).
2.
Y. Mie, M. Ikegami, Y. Komatsu, Gold sputtered electrode surfaces enhance direct electron transfer reactions of human cytochrome P450s, Electrochem. Commun., vol.12, pp.680-683 (2010).

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