NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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リチウムイオン2次電池の高容量化に寄与する正極材料PBAの合成技術

3次元集積型錯体の配位空間・ヘテロ界面の制御技術を駆使することにより、容量劣化を示さないコスト的に優位なリチウムイオン2次電池用正極材料として可能性の高いプルシアンブルー類似体(PBA)に関する研究です。新しいエネルギー貯蔵材料の開発のポイントとなる材料と考えられます。

研究機関・所属 産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門
氏名・職名 大久保將史 研究員
研究テーマ名 3次元集積型錯体における配位空間・ヘテロ界面の融合制御による革新的エネルギー貯蔵材料の開発
応用想定分野 リチウムイオン2次電池
技術概要

 リチウムイオン2次電池は、その高いエネルギー密度と、小型化・軽量化に柔軟性が高い特性から電気自動車や携帯端末機器など近年の様々なエレクトロニクス機器のエネルギー源として利用されています。
 リチウムイオン2次電池の基本構造は正極材料層、負極材料層、電解質層からなります。正極材料は電池の性能を左右する重要な材料です。リチウムイオン2次電池用正極材料として、プルシアンブルー類似体(PBA)を応用する研究を進めてきました。PBAは、充放電サイクル特性が著しく劣ることから検討例が少なかったのですが、これまでに、100サイクルまで容量劣化を示さないPBAの合成に成功しました。今後は、PBAのサイクル劣化抑制の知見を生かして、低コストでさらに高容量・高耐久性・高出力なPBA正極材料の研究開発を進めます。

  • 【図の説明】 (A)PBA電極へのLi挿入反応、(B)PBA電極の充放電サイクル特性

技術の特徴
(1)リチウムイオン2次電池用正極材料として、PBAを安定に使用する技術を確立しました。
一般的な酸化物、ポリアニオン系正極材料と比較して、PBAはこれまでサイクル特性に劣ることが報告されていましたが、金属間結合を最適化することによりサイクル特性を向上させる方法論を確立しました。
(2)Co,Niベースの現行材料と比較して、Feを主に使用するためにコスト的に優位です。
PBAは、FeやMnを主に使用すること、室温・水溶液プロセスでの合成が可能であることから製造コストに優れ、また、製造に消費されるエネルギーも抑制することができます。
(3)LiFePO4等と比較して、電子伝導の観点から高出力化に優位です。
LiFePO4等のポリアニオン塩において必須な導電性カーボンのコートが不要であるため、一般的な酸化物系と同様のプロセスで電極作成が可能です。
従来技術との比較
特許出願状況
1)特願2010-119968 プルシアンブルー類似体を用いたリチウムイオン2次電池電極材料
2)特願2010-192362 無欠陥型プルシアンブルー類似体によるリチウムイオン2次電池用電極材料
研究者からのメッセージ

 PBAは、既存の正極材料に匹敵する容量を保持しながら、Mn・Feを使用したレアメタルフリーな材料であり、更に、製造コストも室温・水溶液プロセスでの合成が可能であることから極めて安価です。

参考:

・産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 エネルギー界面技術グループ
http://unit.aist.go.jp/energy/groups/eit.htm
エネルギー技術研究部門 エネルギー界面技術グループ発表論文リスト集

  • 発表論文:
  • 1.Switching redox-active sites by valence-tautomerism in Prussian blue analogues AxMny[Fe(CN)6]nH2O (A: K, Rb): Robust frameworks for reversible Li storage, 大久保將史、朝倉大輔、水野善文、溝川貴司、工藤徹一、本間格, J. Phys. Chem. Lett., Vol. 1, 2063-2071 (2010)
  • 2.Fast Li-ion insertion into nanosized LiMn2O4 without domain boundaries,大久保 将史,本間 格,周 豪慎,細野 英司,ACS NANO,Vol. 4−2,741〜752 (2010)

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