NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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寄生植物の多糖類が関与か

〜発芽過程のメタボロミクスに基づいた寄生雑草に選択な除草剤〜

研究機関・所属 大阪大学 大学院工学研究科
氏名・職名 岡澤敦司 助教
研究テーマ名 グローバルな食糧確保に貢献する寄生雑草制御技術の開発
応用想定分野 除草剤
技術概要

 現存する既知の寄生植物は4,500種程度あり、そのうちの数十種はアフリカや地中海沿岸諸国などの乾燥地における農業に多大な損害をもたらしていることから、その防除法の確立が切望されています。ハマウツボ科(Orobanchaceae) には半寄生性のストライガ (Striga spp.) と全寄生性のオロバンキ (Orobanche spp.) があり、両者とも吸器 (haustorium) と呼ばれる特殊な器官を介して宿主の根に付着し、維管束を結合させる事で水分や栄養を宿主から奪う根寄生植物です。ストライガはトウモロコシ、ミレット、ソルガム等の単子葉類の宿主に寄生しますが、オロバンキはマメ類、トマト、タバコなどの双子葉類に寄生します。しかし、ササゲ等のマメ科に寄生する Striga gesnerioides のような例外も存在します。根寄生雑草の発芽は適当な湿度と温度に数日間置かれた後に、宿主の根から放出されるストリゴラクトンを認識して初めて発芽します。

 本研究は、この特徴的な生理応答中に寄生植物特有の代謝経路を見出し,その阻害剤を探索することで,根寄生植物にのみ有効な除草剤を開発することを目的としています。メタボローム解析により網羅的に親水性一次代謝物を調べ、発芽に関与する物質を同定したところ、n-ブチルアミン、グルセロール、プロリン、マロン酸、グルタミン、クエン酸、フルクトース、グルコース、アラントイン、ガラクトース、スクロース、トレハロース、ゲンチアノースなどが同定されました。

 ゲンチアノース (Glc(β1→6)Glc(α1→2β)Fru,図) はこれまでに植物の種子中での存在が知られていなかったことから、これに注目して代謝関連化合物の変動を調べてみました。その結果、ゲンチアノースの減少と並行してグルコースやフルクトースが増加することが明らかになり、ゲンチアノースが発芽に必要なこれらの単糖の供給源であることが示唆されました。そこで,糖加水分解阻害剤であるノジリマイシンや類似物質による阻害実験を行ってみました。その結果、ノジリマイシンが顕著に発芽を阻害する事が認められました。

技術の特徴
メタボローム解析により寄生雑草の発芽に関与するゲンチアノース代謝経路を除草剤の新たな標的に設定
従来技術との比較
既存の除草剤と比較した場合の極めて高い選択性
特許出願状況
特願 2008-273361(PCT/JP2009/005150)「寄生植物の防除剤、および寄生植物の防除方法」
研究者からのメッセージ

 2009 年国連食糧農業機関 (FAO) は世界の飢餓人口が 10 億人を超えるとの予測を発表しました。また、同じく FAO のレポートによると寄生雑草は 1-3 億人の食糧の減産の要因になっているともいわれています。これらのことから、寄生雑草の防除技術はグローバルな食糧の確保のために必須だと思われます。アフリカは中国やアラブ諸国の資本注入により経済が大きく発展しようとしています、寄生雑草は経済発展に伴うアフリカの食糧増産にブレーキをかける最も大きな要因となると考えられます。従って、寄生雑草の防除技術は人道的な見地からも経済的な見地からも今後ますます重要な開発目標となるでしょう。さらに、地中海沿岸では寄生雑草がヒマワリやナタネなどのバイオディーゼルの原料となる植物に甚大な被害をもたらしています。これらの地域ではバイオディーゼルの普及に伴い、寄生雑草の防除技術が脚光を浴びることが予想されます。

 防除技術の確立という観点から見れば、我々の研究はまだスタート地点からそう遠くは離れていません。しかし、10 年後を見据えて着実にデータを積み上げて行く事で、全く新しい、また、選択性に優れた寄生雑草の防除法を確立出来ると信じて研究を行っています。

参考:

(1)
Takatoshi Wakabayashi, Benesh Joseph, Koichi Yoneyama, Yasutomo Takeuchi, Yukihiro Sugimoto, Atsushi Okazawa, Study of oligosaccharide-degrading enzyme involved in parasitic weed seed germination, 20th International Conference on Plant Growth Substances, p.125, 2010
(2)
若林孝俊,Benesh Joseph,米山弘一,竹内安智,杉本幸裕,岡澤敦司,寄生雑草ヤセウツボの発芽に関与する糖分解酵素に関する研究,日本農薬学会第 35 回大会講演要旨集,p.114,2010
(3)
ホームページ;  http://www.bio.eng.osaka-u.ac.jp/pl/Site/Welcome.html

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