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【017】情報システムの導入方法を改善し企業体質を強化する

【017】情報システムの導入方法を改善し企業体質を強化する

吉見 久

情報システムの導入方法を改善し企業体質を強化する

企業における情報システムには製品へ組み込むソフトウェアや業務遂行に必要なアプリケーションなど様々なものがありますが、戦略的投資対象でも定型業務などの経費対象システムもこの数十年間で企業経営には欠かせないものになりました。

質問ですが、皆さんは情報システムに振り回されていませんか?
本コラムは「情報システムに振り回されない工夫が企業体質を強化する」がテーマです。
情報システムと聞いて次のような経験にあった方は少なく無いと思います。
・ 導入スケジュールから延び延びになった
・ 何でもできますと言われたが使いづらいなど現場からのクレームが頻発
・ トラブルへの対応が遅い
・ 保守運用の費用負担が重い
筆者は情報システム業界に携わっていますが、日頃からこの産業構造には歪があると感じています。情報システム業界自身も厳しい、帰れない、きりがない、過労死、休暇が取れない、結婚できない・・・など3Kと揶揄されることがありますが、その背景には「大手ITベンダーと幾重もの下請け構造」や「発注要件の不明確さ」などがあります。企業体質の向上はこの「人材供給システム」との決別と、システムの導入から「価値の導入」へ移行する、パラダイムシフトにあります。

二つ目の質問ですが、皆さんはそのコスト対効果に満足していますか?
経産省による平成26年情報処理実態調査によると「攻めのIT経営」に取り組んでいる企業は全体の約2割にとどまり、実際に効果があったのはその内の4割弱でした。効果のある戦略的IT投資ができていたのは8%しかないのです。一方、総費用の増大理由を見てみると、要件仕様の決定遅れ、要件分析作業不十分、開発規模の増大が複数回答のベスト3で何れも4~5割と他の理由を大きく上回っています。(日本情報システム・ユーザー協会)
ユーザーによる要求仕様の不明確さが仕様変更理由の9割で、それが工期・費用へ影響しています。

以前、筆者が経験した数億円規模のプロジェクトでは原価がその数倍に膨らみながら結果として中断したプロジェクトがありました。そのケースでは情報システム側の仕組みだけが示され業務目的が盛り込まれておらず共有もされていませんでした。業務改革では○○を効率化するのが目的だと言われることがよくありますが、その時点で失敗です。本来は「効率化によって実現したい成果」を目指さなければなりません。効率化は目標を達成するための手段の一つにはなり得ますが目的にはなり得ません。例えば、「購買業務の効率化」がキーワードだとすると効率化した結果、どんな効果を期待しているのでしょうか。間接コスト削減? 調達期間短縮? これらのことを突き詰めていくと本来の目的が見えてきます。
残念ながらこの単純な原理を理解されていない場合が思いのほか多くあります。

現場には色々な事情がありますが、情報システムの導入や利用に際しベンダーや情報システム部門などへ丸投げしない方法を先ずは確立することです。行うべきことが山ほど出てきますが、そのマネジメントを着実に行うことが企業体質の強化につながります。そう、経営に魔法は使えないのです。
情報システムの背景には当然ながら戦略があり、その構想と戦術への展開内容からシステム要件が抽出されています。敢えて言うと、情報システムの導入に際し要件が明確になってないのは、戦略や戦術が具体的でない、或いは責任者が正確に理解してないのです。要件は企業のコアコンピタンスを反映したものですのでユーザーでなければ示すことができません。それを業務知識の少ないベンダーなどに任せてしまえば費用対効果の低減及び必要時期からの遅延による機械損失へと繋がっていきます。

情報システムに振り回されないために、
・ 情報システムと業務とは切り離して、先ずはユーザー業務のゴール(目的)を明確にし、社内で共有する。
・ 目的が実現できるスキームを組み立てる。
・ 情報システム要件は、業務目的が決まった後でユーザー自身が設定する。
・ (業務改善及び情報システムなどの)費用及び効果は、
必ず定量化(金額換算)して比較検討する。
これらに留意すればコストを低減しつつ品質を向上させた成果が出せるのです。
当たり前のことですが、残念ながらなかなか実現しづらい現実があります。それをシンプルな全体最適手法と迅速に成果を出し成功体験を積重ねながら進められるインクリメンタル手法などで実現しやすくすることが肝要です。泥臭いかもしれませんが、情報システムに限らずどんな業務を実施するにもこの原理が最も確実に成果を出す近道だと感じています。

情報システム業界に携わる私としてはこれにより情報システム業界の3K体質改善にもつながり、何よりもユーザー企業の国際競争力が増強されると信じています。昨今の情報セキュリティ事故例を見ても分かるように、どの企業でもある程度のITリテラシーが必要な時代でありリスク管理を含めた情報システムとの関わりを避けることはできません。たとえ情報システムの専門外であってもシステムの導入はユーザーが主体的に進めたいものです。

2015年7月7日

著者:吉見 久(よしみ ひさし)
出身企業:精密機器メーカーグループの情報システム企業
略歴:制御系システム開発部部長、企画部部長、業務系システム開発部部長、総務部部長
専門分野:業務改善/改革コンサルティング、システム導入プロジェクトマネジメント

*コラムの内容は専門家個人の意見であり、IBLCとしての見解ではありません

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