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 株式会社 IBLC

【008】食の安全に思う

【008】食の安全に思う

本澤 清治

2007〜2008年、中国で食材へのメラミン(プラスチック原料)混入によって、ペットや乳幼児の腎不全の死亡事故は世界を駆け巡りましたが、このためか、私が必要性を長年訴えてきた「ペットフード安全法」は2009年にようやく制定されました。

ペットフードに使う蛋白質原料や乳製品にメラミンが「見掛けの蛋白質」の偽装材として使われてきました。わが国でも1966〜1968年にメラミン類似化合物のアンメリンによる事故が雛で発生しています。飼料用魚粉に見掛けの蛋白質の増量目的でアンメリンを混入したために、それを食べた雛が盲目になったということです。
一般的に蛋白質はそれに含まれる窒素を定量分析して、その数値に係数6.25を乗じて求めますが、メラミンは窒素を66%含むので蛋白質に換算すれば、66%×6.25=400%以上になります。したがって例えばメラミンを1%添加すれば、見掛けの蛋白質が4%増加します。

食を通してのメラミン障害、PCB(ポリ塩化ビフェニル)カネミ油症、イギリスで最初に発覚したBSE(牛海綿状脳症いわゆる狂牛病)は、それぞれ、ペット・鶏・牛という動物で先行発覚し、数ヶ月から数年後に人で発覚しています。(BSEはヒト変異型クロイツフェルト-ヤコブ病として) また、私はアオイ科植物の綿やカポックの種実油(未精製)を鶏に食べさせると生殖障害と奇形ヒナが発症することを1964年に究明しましたが、その半世紀後に中国において人と鶏で同様な生殖障害が発症しています。

一方、障害が動物よりも人で先行発覚した例は、ビタミンB1欠乏症(脚気)、ビタミンDの欠乏症(カルシウム吸収不全)と過剰症(カルシウム沈着)、鮮度不良の魚肉による食中毒などがあります。人と動物のどちらが先行発覚したかは分かりませんが両者で発生している例として、亜鉛欠乏による皮膚障害(人・犬・豚・鰻)と短躯症(人・鰻)、酸化油脂に対するビタミンEの相対的不足障害(人・豚・猫・鯉など)、カルシウム不足による骨粗鬆症(人・産卵鶏)や卵殻不全(産卵鶏)があります。さらに食物繊維の不足で消化が良いものや物理的に軟らかいものばかり偏食することによる消化器の萎縮や障害(人・牛・豚・鶏)もあります。

いずれにしても、人と動物における食の安全は、相互に密接な関連があります。人や動物の食べ物に関わる研究者や技術者は動物別に捉えがちですが、「動物は基本的に同じ」という観点に立って、隣の動物の情報が大切なことを認識したいです。

このことに関連して現在重大な課題は、豚シャブ用などで薄切りし易くするために、豚肉の締りを良くする目的で肉豚に前記のカポック油を食べさせていることです。肉豚の発育には影響しませんが、産卵鶏では生殖障害・奇形ヒナを発症しており、豚肉にカポック油の毒性成分(プロペン環脂肪酸)が残留するので危険です。なお、3世紀にわたって原因不明で症状がBSEに似ている生殖性「豚ダンス病」の原因物質はカポック油の可能性が非常に高いと私は判断しています。

TPPにおいても、農畜水産物の「食の安全」は大切な武器ですが、養豚関係者は豚学の殻を破って、消費者の視点で食の安全を真剣に考えたいものです。

2015年1月20日

著者:本澤 清治(ほんざわ せいじ)
出身企業:日清製粉株式会社
略歴:日清製粉(株)福岡飼料工場長、日清製粉(株)那須研究所長、日清飼料(株)監査役、日本飼料工業会技術委員会副委員長、日本科学飼料協会飼料部会長理事
所属:日本ペット栄養学会、日本技術士会(畜産技術士センター)
専門分野:動物栄養・配合飼料・ペットフード

*コラムの内容は専門家個人の意見であり、IBLCとしての見解ではありません

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